「毒もみのすきな署長さん」 宮沢 賢治


「毒もみ」というのは、川に毒をもみだすという、プハラの国ではかたく禁じられている漁業法である。

「火薬を使って鳥をとってはなりません、
 毒もみをして魚をとってはなりません。」


どうやら最近この「毒もみ」が行われているらしい。そしてその犯人は、毒もみを取り締まる立場であるはずの「署長さん」であった。署長さんはあっさりと罪を認める。

この国では「毒もみ」は大罪であるので、署長さんは死刑になる。「クねずみ」もそうだったが、宮沢作品で何か罰を受けるというとき、その罰というのは「死刑」なのである。

わたしが宮沢賢治の作品でいちばん好きなのは「貝の火」である。宮沢賢治には「いい話」というイメージがあってそれまであまり興味がなかったのだが、この何とも冷ややかでぞくりとする後味の悪さにとても惹かれた。「貝の火」が特別そうであると思っていたのだが、どうやら宮沢賢治の作品はこのようなラストが多い。子供の頃には良さがわからなかったが、今になってようやく面白さがわかってきた。

さて署長さんはしばられて、裁判にかかり死刑しけいということにきまりました。
 いよいよおおきな曲った刀で、首を落されるとき、署長さんは笑って云いました。
「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中むちゅうなんだ。いよいよこんどは、地獄じごくで毒もみをやるかな。」
 みんなはすっかり感服しました。


「毒もみのすきな署長さん」
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