「玩具/『玩具』あとがき」 太宰 治


私は夜、いつも全く眼をさましている。昼間、みんなの見ている前で、少し眠る。
私は誰にも知られずに狂い、やがて誰にも知られずに直っていた。


幼い頃の記憶。あるいは嘘。この感覚、少しわかる気がする。

これは未完の作品らしい。あとがきは「玩具」「魚服記」「地球圖」「猿ヶ島」「めくら草紙」「皮膚と心」「きりぎりす」「畜犬談」について。

「玩具」などは、散文詩とでもいふべきもののやうに思はれる。

「めくら草紙」は、書いてゐる時には實に悲しい氣持であつたが、いま讀むと、ユウモラスな箇所が少くない。悲痛も、度を越すと、滑稽な姿にアウフヘーベンするものらしい。

「畜犬談」はまるでエッセイのようだと思ったが、これを読む限り創作なのであろう。

甲府では私は本當に野良犬どもに惱まされた。はじめは大まじめで、この鬱憤を晴らすつもりで取りかかつたのだが、書いてゐるうちに、滑稽になつてしまつた。憤慨もまた度を越すと、滑稽に止揚するものらしい。書き終へて讀みかへしてみたら、まるでもう滑稽物語になつてしまつてゐたので、これは當時のユウモア小説の俊才、伊馬鵜平君に捧げる事にしたのである。

「玩具」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card257.html

「『玩具』あとがき」
http://www.aozora.gr.jp/cards/000035/card54172.html

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