「黒蜥蜴」 江戸川 乱歩


明智小五郎シリーズ。「黒蜥蜴」という女の賊が登場するが、テイストとしては二十面相のシリーズに近い。殺人事件の推理をするのではなく、怪盗と騙し合いをするのである。子供向け作品ではないと思うのだが、相変わらず変装やら身代わりの人形やらのトリックを用いている。本格的なものを期待すると肩透かしを喰らうが、乱歩のこれはもはやこういうものとして楽しむべきなのだろう。

二十面相は人を殺さないが、黒蜥蜴は人殺しも平気でする。「女アルセーヌ・リュパン」と称される黒蜥蜴の美しい悪党ぶりは見もの。好敵手である明智との関係は、二十面相の場合と違って男と女であることが色濃く滲み出る。トリックは子供騙しでも、このあたりの心理はやはり大人向け作品である。

黒蜥蜴の人間の檻や水槽などは「パノラマ島奇談」を彷彿とさせる悪趣味で良かった。
乱歩自身が「人間椅子」のパロディというかオマージュというか、そういうことをやっているのも面白い。

「黒蜥蜴」
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